ちょっとずらす、という知恵

お気に入りのお店や、よく行く場所。
そこには、決まったやりとりや、いつもの流れが生まれます。
とても美味しいパン屋さんがあります。
店員さんはとても仕事熱心な方で、注文を終えると必ず
「今、焼きたての◯◯もいかがですか?」
と声をかけてくださいます。
私はいつも、決まったパンを二つ買うだけ。
そのため、追加のおすすめには
「あ、今日はいいです」
と断ることが多くなっていました。
お商売なのだから気にしなくていい。
そう頭では分かっていても、どこか心に小さな引っかかりが残ります。
頑張って声をかけていらっしゃるのに、断り続けることへの、ほんのわずかな居心地の悪さです。
そんなある日、ふと考え方を変えてみました。
最初の注文を一つだけにして、
おすすめされたら、そこで二つ目を頼めばいいのではないか、と。
次にお店を訪れたとき、こうしてみました。
「ソーセージパンをください」
「焼きたてのクロワッサンもいかがですか?」
「う〜ん、クロワッサンも良いですが、今日はシナモンロールをいただきますね。」
それだけのことですが、不思議と場の空気がとても柔らかくなりました。
私は断らなくて済み、
クロワッサンからシナモンロールには変わりましたが、店員さんはおススメした後、購入につながったので、本当に嬉しそうに笑顔で「ありがとうございます!」と言ってくださる。
ほんの少し、順番や角度をずらしただけ。購入の個数も変わってはいませんが、
それだけで、双方が幸せな感じです。
真正面から向き合うと、どちらかが我慢する形になることがあります。
でも、少しだけ発想を変えてみると、無理なく収まる場所が見つかることもある。
これは、いわゆる「トンチ」なのかもしれません。
一休さんのように、
難しい問題を力で押し切るのではなく、
知恵でほどく感覚です。
人間関係も、仕事も、日常の小さな出来事も。
「どうするか」だけでなく
「どこを少しずらすか」
を考えてみると、心が楽になることがあります。
真正面から向き合わなくても良い。ちょっとずらして気分良く。

少し視点を変えるだけで、世界は意外と優しく動き出すものです。