夜明け前の道は、どこか心細いものです。

真冬の早朝6時台。
まだ空は真っ暗で、街も静かに眠っています。
私は自転車を走らせながら、ただ前を見て進んでいます。
ある日、ふと右側から黒い影が現れ、思わずドキッとしました。
けれど、それはガードレールに映った自分自身の影でした。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」
昔からあるこのことわざは、人の心のあり方をよく表していると感じます。
私たちが感じる恐怖の多くは、実体よりも思い込みから生まれているのかもしれません。
道の途中には、暗がりの中に細いポールが立っている場所があります。
注意して見ていないと、ぶつかりそうになるほど見えにくいものです。
その道を進みながら、ふと思いました。
この光景は、人生そのものではないだろうか、と。
人生もまた、何が起こるかわからない道を、手探りで進んでいくものです。
けれど、気を抜かず、目を凝らし、今ここに集中して進んでいれば、
障害物はきちんと避けることができます。
恐怖は、実体そのものではなく、
自分の心が作り出しているものなのかもしれません。
冷静に見つめ直せば、
それが何なのかは、案外はっきりと見えてくるものです。
必要以上に恐れず、落ち着いて一歩ずつ進んでいけば、
やがて必ず夜は明けます。
1日も、一生も、同じなのだと思います。
1日を丁寧に生きることは、
一生を丁寧に生きることにつながっているのではないでしょうか。
夜明け前の冷たい風に吹かれながら、
私はそんなことを、静かに噛みしめていました。